Maison book girl「Solitude HOTEL 6F yume」という夢を見た

Maison book girlさんワンマンライブ「Solitude HOTEL 6F yume」@ヒューリックホール東京 20181216

夢日記・考察・感想

 

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-夢日記-

赤いスクリーンに6Fのロゴ。左右に赤いベッド。私が座るのは赤い椅子。赤い世界。寂しくて心地いい曲群が流れ続ける。人々が席に着き始める。かすかな喋り声と、静寂と、音楽が混ざっていく。やがて誰も喋らなくなる。最後の音楽が終わる。壁の赤が濃くなる。暗転。

 

1 fMRI_TEST #3

美しい音楽が満たしていた空間を強烈なfMRI音が塗り替える。脳のイメージのような映像が四角く浮かび上がる。ランプに見える。白いスクリーンの右下部分のドアが開く。ドアがあるとは思わなくて驚く。真っ白な光が漏れてくる。ペストマスクをつけた白い人達が四人入ってくる。私の知っている女の子達だとなんとなく思う。二人ずつ左右のベッドに倒れ込む。そのまま動かない。クラップの音が聴こえてくる。

 

2 夢

右のベッドの女の子が一人起き上がる。マスクを外す。私の思った通りの顔。私が知っているショートカットの女の子。白いコートを脱ぐと水色の病院着。なぜか胸が締め付けられる。彼女が真ん中へ歩いていく。光の真下に立つ。ゆめ 見たの 忘れた場所。凛と響く、透明な、鋭い歌声。あまりにも。あまりにも美しい光景。聴覚も視覚も、このためにあったのだとさえ思う。寝ていた三人もマスクを外していく。ロングヘアーの女の子。ミディアムヘアーの女の子。それから白っぽい金色の髪、のはずの女の子。マスクの下から出てきたのは、こんなに遠くからでもはっきり見える真っ赤。息が止まりそうになる。暗闇の中、色々なモノのイメージが真ん中に浮かぶ。病院着を纏い四人は踊る。リズムが変わる。世界は真っ白になる。真っ白な壁に踊る影が黒く濃く写る。なんて美しい世界。再び暗くなる。夢の世界。続いていく。ミディアムヘアーの子、私の知っていたその人の名前は「井上唯」だから仮に井上さんと呼ぶ、井上さんの優美な舞に目を奪われる。最初の女の子、「矢川葵」さんが最後のフレーズを歌う。四人が一つにかたまり、赤髪の「コショージメグミ」さんが矢川さんの肩で眠る。拍手の音が聴こえてくる。私は動けないまま。四人は去っていく。

 

3 ELUDE

鳥の声。スクリーンをびっしりと埋め尽くす細かな水滴。ポタポタと水が落ちてくる。イメージが変わっていく。落ちたり流れたり。薄れて重なって。延々と続く。イメージはスクリーンを越え、舞台の枠も天井も壁も全て覆っている。水滴を垂らす手のような影に気づく。誰かが垂らしている。鋭いシャッター音。鳴り出す音楽。映っては消えゆくイメージ。どんどん速くなる。どんどん濃くなる。黒い服の四人が歩いてくる。

 

4 レインコートと首の無い鳥

水の中、血のような赤が滲んで流れる。血染めの世界。スクリーンや舞台という枠はもうない。暴力的に流れる禍々しい赤。黒い四人は力強く舞う。二人ずつでシンクロする動きに圧巻される。首の無い鳥の声。井上さんの動きが鮮烈でまた目を奪われる。目の前で繰り広げられているのは、とても、私の見たがっていた景色だと、感極まりながらじっくり見る。

 

5 YUME

雨。四人は項垂れたまま動かない。イメージが浮かんでくる。膝を抱えたような黒い女の子の顔に赤いベッド。同じ格好をするように四人がうずくまる。イメージの黒い女の子はだんだん薄れていく。雨に打たれて溶けていくように。やがて完全に溶けてなくなる。

 

6 おかえりさよなら

どこかで見たことのある写真。誰かが手に持っている。ゆっくりと水に浸す。少しずつ溶けていく。青みを帯びたスクリーンの前、「和田輪」さんの歌声がしなやかに響き渡る。おかえりさよなら、と手を振る四人。左側がボロボロに崩れていく写真。もう一枚の写真がかざされる。バスルームの排水溝。置いた瞬間斜めに割れる。切り離された断片がたゆたう。二枚の壊れたイメージ。ぐしゃぐしゃに溶けた部分がぐるぐると回る。歌は響き続ける。最後の瞬間、水が揺れて全てかき消されていく。それを見届けることなく電気が消える。

 

7 GOOD NIGHT

矢川さんとコショージさんが右のベッドへ。和田さんがランプのようなプロジェクターを運んでくる。和田さんと井上さんの上のスクリーンに四角い光が投射される。手がかざされ、影が写る。二人は透明なモノクロ写真を並べていく。よく見えないけれど異国のようなホテルのようなイメージ。並べて重ねて、片付けて、また並べる。子供の遊びのように続ける。投射されたその遊びを、右側の二人がベッドに腰掛けて見上げる。優しい灯りに包まれる寝室のような空間。遊びが終わると、和田さんがプロジェクターを片付ける。四人ともベッドへ。

 

8 不思議な風船

本を持った矢川さんが立ち上がる。不思議な風船の物語を読み始める。背後には透明な写真がかざされる。青空に浮かぶ空中ブランコの写真。誰かの指が、それを真ん中に置く。女の子と風船の物語は続く。遊園地の写真が次々かざされては置かれ、重なっていく。写真は画面を埋め尽くし、最初の写真はもう黒い影でしかない。舞台の真ん中に並んで本を読み上げる四人。うっすらとした白い光の筋が一人一人を上から照らす。四人は物語の最後をリレーするように読み上げていく。読み終えた人のぶんの光がすっと消えていく。残ったコショージさんがゆっくりと最後の言葉を紡ぐ。赤い髪を輝かせて。

 

9 fMRI_TEST #1

10 fMRI_TEST #2

二人ずつ左右のベッドへ。暗闇の中。一人が眠り、一人が傍に立っている。左のベッドがある一角を光が照らす。スクリーンが四角く白く光る。激しく点滅する強烈な光。目を開けているのが苦しいくらい。立っている一人がマイクを構える。夢を見ていましたか?はい、見ていました。のようなやりとりをする。右側でもおなじようなことが繰り返される。私の記憶にあったイメージが引き出される。夢の実験。

 

11 言選り

まったりとした音楽が流れ出す。カチ、カチというノイズに合わせてレーザーの光が舞台を上下に貫く。光のイメージが背後に流れる。レーザーの光が飛び交う。電脳空間じみていく。けれど気色悪い夢のような光も写される。ときおり光の筋が客席上の天井から舞台に伸びる。信じられない光景。その中で四人は歌う。この音楽、この踊りに最も合うのがこの空間だと感じる。全ての調和が取れた完璧なシークエンス。

 

12 SIX

ドアが開く。真っ赤な光の世界に続くドア。四人のシルエットが黒く浮かぶ。まず一人、ドアから出ていく。また二人、一緒に出て行く。ドアが閉まる。同時にドアが赤く染まり始める。取り残された矢川さんが一人ベッドに座る。ホテルの部屋だと思う。壁の右から左へ、赤い光と黒い模様が広がっていく。禍々しい光景。ドアのところが黒い長方形にかたどられる。ホテルの建物だと思う。真っ赤な草原が広がっていく。三人が左から歩いてくる。

 

13 狭い物語

暗く濃い赤の世界。少し明るい赤の世界。白い光が混じる赤の世界。その連続を四人の歌が繋いでいく。ゆらゆら揺れる。跳ねながらくるくると回る。そんな赤い世界を見続ける。やがて矢川さんが前に出る。座り込んでいきながら、少し掠れた声で叩きつけるように叫ぶ。体を重ねている。そう歌って立ち上がり手を振る。その瞬間真っ赤な光が真っ白に塗り変わり、真っ赤な空が青空に戻る。草原も四人もなにもかも、色を取り戻した世界。私はこうなることを予感していたがそれでも、視神経の全てをもって歓びに打ち震える。

 

14 MOVE

白いスクリーンに人々の影が映る。無数の影が高速でフラッシュしていく。子供の姿が多い気がする。

 

15 ボーイミーツガール

モザイクのようなノイズでぐちゃぐちゃに乱れた映像が流れる。人が写っているように見える。少し軽快な音楽に乗せて奇妙な世界が描写されていく。ボーイミーツガール、と歌いながら四人は跳ねる。コショージさんのキレとジャンプの高さに目を奪われる。きっとこの音楽をものすごく楽しんでいる。人間らしさ、と思う。

 

16 PAST

ドアが叩かれる。音と共に白く光る。矢川さんとコショージさんは右のベッド、和田さんと井上さんは左のベッドへ。コショージさんと井上さんが倒れ込む。矢川さんと和田さんはマイクを構える。流れ出した拙いピアノに合わせて二人が薄くハミングする。子守唄のよう。スクリーンにはうっすらと、青い光の中で踊る四人。途切れ途切れの断片。それは私の記憶の何処かにもある映像。過去。

 

17 rooms

四人が起き出す。白黒の模様が激しく照らし出されるスクリーン。その前に並んで踊る。この音楽はこのように在るべきだと不意に思う。全てがカッチリとハマっている気がする。何もかもがあって、何も無くなるの。と四人は歌う。直後、静寂と暗闇の数秒間。足音がはっきりと聴こえてくる。最後に光を消した後、四人でコードを引っ張ったように小さな電気が点く。その下で回る四人。とても綺麗。

 

18 MORE PAST

横並びになり、淡く照らされる四人。ゆっくりとしたピアノに乗せて歌う。ひたすら聴き入る。この世界を底支えするような和田さんの歌に痺れる。15年前に想いを馳せる。ゆるやかな微睡み。灰色の砂嵐が浮かんでくる。ざわめくノイズがだんだん大きくなっていく。歌が終わる。全てが砂嵐と騒音に包まれていく。

 

19 十六歳

間髪入れずに音楽が流れ出す。これまで聞こえていた拍手の音が今回ばかりはない。ぼやけた夜景や地下鉄のようなイメージが流れる。四人は歌う。惑い、走る。玉ボケの丸い光。緑色と黄色がぼんやりと歌にシンクロする。

 

20 NIGHTMARE

電車の音。電車のような映像。客席に座る人々が次々と姿勢を正し、前のめりになっていく。まだ誰も見たことのない世界が待っている。

 

21 影の電車

電車のように連なる四人。ショッキングピンクに照らされて歌う。笑って笑って、と顔の前で手を回す。繰り返される電車ごっこ。四人の声が激しい。これまでとは別種の気迫。叫ぶように張り上げる矢川さん。言葉が踊っているような振り付け。電車のような映像。全てが鮮やかに映る。この世界の終わりを予感しながらそれを見ている。

 

22 fMRI_TEST #3

四人が眠りにつく。再び流れるfMRIの轟音。クラップ音が鳴った瞬間、この夢のはじまりと何もかも同じだと悟る。不安感が押し寄せる。

 

23 夢

最初に見た景色が繰り返される。矢川さんが真ん中に出てくる。ただ一つ違うのは服の色。矢川さんが歌い出す。しかし最初のようにはいかず、歌声は揺らいでいる。次々と歌い出す三人。少しずつ揺らいで掠れている。この世界の維持はもう限界なのだと感じる。私の意識も散漫になっていく。一度見た光景にうまく没入しきれない。四人は徐々に本来の歌声を取り戻していく。覚めていった夢を今日も探すの。もうすぐ夢が覚める。それはきっと忘れてゆくことなの。この歌が終わったら。全て知ったはずの事も忘れたふりをして。全て終わってしまう。橋の上。もうすぐ歌が終わる。またこの場所___海の中 ゆらぐ 息を 潜めて。唐突に言葉が重なる。存在しないはずの続き。聞いたことのない詞を歌っているのだと理解した刹那、身体ごと持っていかれるような衝撃。意識の隅々まで一瞬で覚醒する。よく知ったメロディーに乗る、全く知らない歌。強烈な違和感。それでも必死に聴き取ろうとする。掴めないまま遠のいていく、と思ったのも束の間、それは繰り返される。四人は同じ詞を歌い続ける。白い光に包まれて踊り続ける。ファンタジックで美しい光景。でも私には悪夢のように映る。美しくも不気味な歌。壊れた人形のようにワルツを踊る四人。バグが続いていく世界。そのまま舞台の幕が左右から閉じ始める。信じられない。本当に悪夢を見ているような心地。幕が閉じ切る瞬間の気味の悪さと、幽かな寂しさ。暗闇の中、声だけが聴こえ続ける。もう見えないけれど夢は続いている。きっと踊り続けている。繰り返された歌が、ついに終わる。全て終わったかと油断する。でもまだ終わっていない。最後は矢川さんの一節で終わる。消えたゆめ 本当のことは いつも ゆめに そっとしまってる。心に直接流れ込んでくる。夢の最後の言葉。公演のはじまりと同じような、完璧な歌声。ビブラートの途切れる最後の最後の瞬間までが美しく響く。ノイズが曲を断ち切る。あたりがフッと明るくなる。終幕。万感の思いで手を叩く。拍手の海に包まれる。そうして夢は覚めていった。

 

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-考察-

<yoru公演と楽曲MVを踏まえた考察メモ>

・白い光は現実世界のもの

・yoruの最後ベッドで眠った四人が、現実世界からドアを通って夢の中へ

・夢の世界の四人はペストマスクをしており、現実世界の四人とは別の存在

・yoru公演の終盤に登場したペストマスクの四人は、この、夢の中の四人だった

・もしくは、yumeの冒頭の四人は病院着で実験として眠っている四人であり、また別の存在、あるいはまだ現実との狭間にいる存在

追記・そもそも四人は現実世界から夢の世界に移行する主体だと考えていいのか?黒い服の四人は、病院着の四人に夢を見せる側の登場人物である可能性もある(病院着の四人はおかえりさよならMVにおいては映写室で映像を見ている存在)

・SIXでドアの向こうにあった赤い光は夢の中のソリチュードホテルの外の世界

・矢川葵が一人残る部屋は夢の中のソリチュードホテルの部屋

・三人が戻ってきたというより矢川葵が部屋から外へ出て合流した

・しかしドアから出ていかないということは四人で踊った赤い草原は夢の中の矢川葵の夢!?

・最後の「夢」の延長パートにおける白い光の世界=夢と現実の境界 

・夢の世界が現実の光に飲み込まれていく

・四人が現実へ帰還していく

・四人で同じ夢を見ていたか、四人の夢が繋ぎ合わさったのがこの公演なのか、

・もしくは、四人の夢ではなく矢川葵だけの夢(→・矢川葵が起き上がるところから始まる・最後も矢川葵の歌で終わる・狭い物語で一人だけ部屋にいるのは矢川葵 ・おかえりさよならMVにて病院着で寝ているのは矢川葵)

・ドアが開いて始まった公演なのに幕が閉じて終わる=幕でシャットアウトされて消えていくのは我々の夢

・この公演の一つ一つの場面は四人の夢であり、我々が目撃したその全体もまた夢

・夢を見ている四人の夢を見ていた我々

・我々が見ていた夢が幕の向こうに遠のいていき、会場の電気が点いて完全に覚めた

 

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-感想-

生涯一。最初に浮かんできたのはその言葉だった。生涯一レベルの公演、芸術を見てしまった気がする。こんなに凄いことを体験したらじっとしていられない。黙ってはいられない。とりあえず何か書かないと死んでしまう。そう強く思わされるパワーがあった。だからこうして書いてみている。

一日しか経っていないのにもう夢を思い出すようにしか思い出せない、不思議な時間だった。終演後しばらく息をするのが大変だったことは克明に覚えている。呆然としすぎてアイドルさんのチラシ配りをスルーしてしまった。クマリデパートさんごめんなさい。

ブクガは一年ほど前から曲だけ聴いていて、Youtubeも見ていて、SNSはたまに見る程度、というスタンスでゆるく好きだった。凄いライブをしているのは映像から伝わってきたけれど、もっと完璧な形になるはずだという予感があり、生歌がバリバリキマるようになった頃見に行こうと思っていた。

その矢先に4F公演があり、レポートを読んで衝撃を受けた。後日映像を観て、絶対にこれを生で体感したいと思い、次のSolitude HOTELでブクガデビューをしようと誓いつつも5Fは都合がつかず泣く泣く断念。6Fを待っていた。

初めて観るのは着席がいいと思い、yoruのみ行くことにした。迎えたyoru公演。ブクガのライブ会場に自分が実在することに驚いた。メンバーが出てきた瞬間泣きそうになった。生で見たかったあのダンスこのダンス、生で聴きたかったあの歌この歌が素晴らしい演出で届けられていく。ペストマスクの四人が出てきた瞬間完敗した気がした。これがブクガ。

良い公演だった。凄まじい余韻も残った。だが正直どこか物足りない気持ちで帰った。平面の後ろの方の席だったから視界が悪すぎたという自分側の問題もあるのだろうが、あと一歩踏み込めるはずだと思った。見たかったブクガとは微妙に違う。ツイッターを見たらメンバーもサクライケンタさんも「まだ行ける」というスタンスのようだったから、期待を込めて追加公演「yume」を購入した。

当日が近付くと世界がとにかく寒くて、行くのが少しだけだるくなってきてはいたが、行かなければ確実に後悔すると思い有楽町へ向かった。

一曲目「夢」の病院着の葵ちゃんの歌声を聴いた瞬間、ここに来て本当に本当に良かったと思った。変な言い方だけれど元はもう取れた。この夢の冒頭のためだけでも来た価値があった。これからもブクガのライブを楽しみに生きていこうという決意すら、この一瞬のうちにしてしまった。

壮絶な空気からの歌い出し。誰でも絶対に震えてしまうようなこの大一番。一瞬息を呑んでしまったこちらの心配を華麗に裏切るように、堂々とした佇まいで完璧な歌を響かせた矢川葵。只者じゃない。この人は本当に凄い。ちゃんと見ていないとダメだ。体に電撃が走るような心地だった。既に知っている人に“一目惚れ”するとは思っていなかった。

前回は視界が悪くてダンス全体をしっかり観ることは叶わなかったが、今回は段差のあるホールで、席は後ろの方だけれどそこまで遠くもなく、舞台全体を俯瞰で見下ろせる最高の視界を手に入れていた。

改めてしっかり観るブクガのダンスはとても良い。全体的に眺めていたがすぐ唯さんに目が行った。動きがダイナミックで、かつ丁寧。安定しているのに全力が伝わる。優美な伸びと鋭いキレが要所要所で際立つ。柔らかさと冷たさが同居して、色気もある。言葉に落とし込むのはもちろん難しいけれど非常に魅力的なダンスを踊り続けている唯さん。どんな動きも映えていて味があり素晴らしかった。歌声も唯一無二の色が出ていて好きだなあと思う。

コショージさんは赤髪(実際はショッキングピンク)で出てきた瞬間のあの衝撃が忘れられない。ブクガの世界を体現する人、本当に体現してしまう人だと思った。終始存在感が強烈で、存在するだけでエモい人。どのタイミングか忘れてしまったが、四人が上を向いて背伸びを繰り返している時があり、そういう時のコショージさんの体の揺らし方だとか、細かい部分まですごく情感が込もっているのが印象的だった。ボーイミーツガールで異常に楽しそうだったり、一番感情的に踊っている感じがして好きだなあと思った。朗読も歌唱も流石だった。

あの世界観の強度は、しっかりしたパフォーマンスでないと支えきれないだろう。どんなに演出を作り込んでも歌やダンスが人間的なアラを含みすぎていると浮いてしまい、調和が取れない。ブクガの四人はそのラインをしっかり超えていた。その上で、この公演が機械音声や音源ではなく生身の人間の歌で進められる必然性をきちんと感じさせてくれた。生身の四人がやるからこそ味が出るのだと。

とはいえ公演の後半、少し歌うのがキツくなってきたような様子が感じ取れた。微妙にキーが上ずる場面もあった。そんな時、完璧なキーを貫いて世界を立て直していたのが和田輪だった。序盤こそ調子が出ていないようだったけれど、覚醒するように本領を取り戻していき、あの奥深い素敵な歌声を存分に響かせてくれた和田輪さん。いざという時のキメ方にプロフェッショナリズムを感じて心が震えた。ダンスのリズムも完璧で本当にかっこいいと思った。

この四人が今日まで成長を続けてきたのは、この公演のためだったのではないか。今の四人が作る舞台を生で体感できたことは本当にラッキーで幸せなことだと本気で思う。

また、振付をしたミキティー本物さんの意匠にも唸らされ続けた。映像で見るのとは違う、俯瞰でしっかり眺めるブクガのダンスは研ぎ澄まされていて、細かいところまで見応えがある。生身の女の子四人と無機質な世界の間に血を通わせるのがミキさんの振り付けだと思う。初披露となった影の電車の振り付けも、きちんと歌詞を踏まえながらもポップで真似しやすい、かつかっこよくキマるものに仕上がっていて流石だった。

他にもレーザー演出の方など、関わった全ての方に感謝したい。全ての調和が取れた素晴らしいライブで、yoruで感じた「こんなもんじゃない」を見事に回収し、「こんなブクガが見たかった」の数歩先から究極のブクガをぶつけてくれた。あんな風に静かに座って鑑賞しながら激しく心を揺さぶられ続けるような体験は、ブクガに出会う前から潜在的に求めてきたことのように感じる。今それがやっと叶った。このためにブクガに出会ったのだと思える。

具現化されて繰り広げられた夢を本当の夢の記憶のように引きずりながら帰った。音楽ライブに、芸術に、人間に、こんなことが可能なのか、という衝撃で、いっそ落ち込むくらいの気持ちだった。yumeのインスト曲で耳を塞ぎながら電車に揺られた。自分も何か表現したい気がしてなんか夜の街を撮ったりした。

でもサクライケンタには絶対届かない。なにをどうしたらあんな公演を作れるのか。アイドルを、音楽を、ノイズを、舞台を、光を、水を、映像を、写真を、誰も考えつかないような方法で操って、夢そのものを具現化してしまう。こちらの心がどうすれば引っ掻き回されるのか、何をすればどのような気持ちになるのか、サクライさんは全部分かった上でやっているように思えた。自分の心を読まれているような気がした。センスだけでは片付けられない、人間技とは思えない演出が多すぎる。あんなyumeの結末は、世界で彼にしか見つけられない唯一つの答えだ。

サクライさんの何を知っているわけでもないけれど、発想を完璧な形で実現するためなら予算も労力も限界まで費やす男だろうなというのは公演から直に感じ取れた。言われて嬉しいかは分からないが本物の芸術家だと思う。アイドルなのに◯◯だから凄い!なんて言っている暇はなくて、アートの領域で正当に評価されるべき人だと思う。そして世の中のお金はサクライさんに流されなければならない。この世界はサクライさんが存分に創作を極められる世界でなければいけない。

サクライワールドに取り込まれていた公演中、ずっと歓びに溢れていた。この場に座っていなければ受け取ることのできない一回限りの芸術が今目の前で展開している。枯れかけていた生命力が漲っていく音がした。サクライさんが手がけてブクガみんなで作る世界をまた見に行くことができる。それが私にとって上っ面じゃない本物の生きる希望になった。

究極の公演を観たとは思うが、ブクガは確実にまだまだ進化するチームだ。ヒューリックホールは最高の環境だけれど公演内容の規模感に対して舞台が狭すぎると感じもした。広いステージを使ってこれでもかというライブをブチかますブクガもいつか見てみたい。とにかくSolitude HOTEL 7F、8F、その先までも、ブクガにしか創れないものを突き詰めていくその道を、微力ながらも応援させてほしい。

 

 

なんだか、本当にこんなことがあったのか分からなくなってきた。反芻すればするほど霞がかっていく。それでも反芻を止められないのは、本当に素敵な夢だったから。見たということだけは絶対に忘れない、私の大切な夢。覚めていった夢を、明日からも探し続けていく。